古典園芸用語集
- Glossary -



◆ 花色の変異

素心花
(そしんか)
  唇弁上に斑紋が無く,緑・黄・白以外の色素を含まない花。「アルバ」と同義。アントシアンなど赤系の色素の合成能力を完全に欠く個体の花がこのようになる。僅かに色が残るものは「準素心花(セミアルバ)」と呼ばれる。
純白花
(じゅんぱくか)
  純白の花。軸にもアントシアンは乗らず,花粉塊はクリーム色になる。
白紫点花
(しろしてんか)
  斑紋は通常通り生じるが,地が純白の花。花粉塊もクリーム色。
酔白花
(すいはくか)
  花色が薄く,白地の一部にのみに淡い色が乗る花。花粉塊は紫褐色。
斑紋花
(はんもんか)
  唇弁に生じる斑紋の色調や形状,大きさなどに変化がある花。
紅一点花
(こういってんか)
  唇弁の中央に大きな斑紋が一つだけ生じる花。
無点花
(むてんか)
  唇弁が無地で斑紋を持たない花。
口紅花
(くちべにか)
  唇弁の先端部のみ色づく花。
咲き分け
(さきわけ)
  同一花序の中で異なった色の花を咲かす芸。若しくは一つの花の中で異なった色調の部分を生じる芸。花色の比率はランダム性が高い。写真は桔梗の絞り咲き。

◆ 奇花(奇形花)

蝶咲き
(ちょうざき)
  側萼片が完全に唇弁化する芸。距もそれぞれの唇弁ごとに形成される。一枚の萼片が唇弁化すれば「二蝶咲き」二枚が両方共唇弁化すれば「三蝶咲き」となる。
獅子咲き
(ししざき)
  側萼片の下部のみが唇弁化する芸。サギソウの「飛翔」などが有名。
兜咲き
(かぶとざき)
  側花弁が唇弁化する芸。花弁が外に開かず縮こまり,兜のように蕊柱を覆うためこう呼ばれる。
子宝咲き
(こだからざき)
  花の中に花が咲き,層状に花が積み重なる芸。
八重咲き
(やえざき)
  花弁が通常より多く生じ,それが何重にも重なって咲く芸。
多弁花
(たべんか)
  標準花より花弁の枚数が多い花。
四弁花
(しべんか)
  側萼片若しくは側花弁が欠如し,花びらが四枚になったように見える花。
六弁花
(ろくべんか)
  唇弁が花弁化した花。「六歌仙」とも。イソマカキランやキリガミネアサヒランが該当する。
仁王
(におう)
  栃木県で発見された,ウチョウランのフリル系大輪花の銘品。その子孫や似た芸を持つ個体も同様に「仁王」若しくは「仁王系」と呼ばれている。
連舌花
(れんぜつか)
  唇弁の切れ込みがなくなった花。

◆ 葉芸

甲竜
(こうりゅう)
  葉の主脈の部分に背びれ状の盛り上がりが生じる芸。
鈴虫剣
(すずむしけん)
  葉の中心から先端にトゲ状の大きな突起が生じる芸。名はこの突起が鈴虫の雌に見られる輸卵管の形に似ていることから。
コンペ芸
(こんぺげい)
  葉縁に半透明の隆起が生じる芸。
八房
(やつふさ)
  成長点が多数形成され,マリモのようになる芸。小葉性であることが多い。
羅紗
(らしゃ)
  葉の表面に細かい凹凸があり,厚ぼったく皺々になっている芸。毛織物である「ラシャ」に質感が似ていることに由来する。
燕尾
(えんび)
  葉先が二つ(若しくはそれ以上)に割れる芸。
受け葉
(うけば)
  葉が盃状に変化する芸。「盃葉」または「露受け葉」とも。
ガシ葉
(がしば)
  甲竜が複数出た結果,無数の縦シワが葉脈に沿って入る芸。漢字では「雅糸」と書く。または「雅糸竜」とも。
しかみ葉
(しかみば)
  葉がしわくちゃになる芸。丸葉との複合芸は「キャベツ葉」と呼ばれる。
獅子葉
(ししば)
  葉の先が細かく分かれる芸。シダなどによく見られる。なお,万年青において「獅子葉」は葉先が葉もとに向かって内側に巻き込む芸を指す。
立葉
(たちば)
  葉がしならず,直立する芸。
熨斗葉
(のしば)
  葉の両端が熨斗を折ったように巻き込む芸。
管葉
(くだば)
  葉が横方向へ筒状に巻く芸。
巻葉
(まきば)
  葉が縦方向へ巻物状に巻く芸。
豆葉
(まめば)
  葉が通常より小さくなる芸。「チャボ(矮鶏)」や「小葉」,「達磨」とほぼ同義。

◆ 斑入り

覆輪
(ふくりん)
  葉縁を縁取るように斑が入る芸。「中斑」と対にして「外斑」とも言われる。斑の面積が広いものを「大覆輪」狭いものを「糸覆輪」と呼ぶ。
中斑
(なかふ)
  葉の中心部に斑の入る芸。「紺覆輪」とも。中心部が散り斑状になるものを「根岸斑」と呼ぶ。
縞斑
(しまふ)
  葉脈と平行に,一本又は複数本の斑が線状に入る芸。
散り斑
(ちりふ)
  非常に細かい縞斑が無数に散らばる芸。
砂子斑
(すなごふ)
  砂礫のような形の斑がモザイク状に散らばる芸。「胡麻斑」とも呼ぶ。
虎斑
(とらふ)
  境界が不鮮明な斑がブロック上に入る芸。
曙斑
(あけぼのふ)
  柄と地の境界がぼやけ,グラデーション掛かったように見える斑。恐らく朝焼けの空をイメージしたもの。後暗みであることが多く,次第に無地葉に近づいていく。
蹴込み斑
(けこみふ)
  覆輪斑の形状の一つで,葉縁の斑が中心部に向かって跳ね込んでいるもの。「覆輪縞」に近い。
掃込み斑
(はけこみふ)
  刷毛で薄く掃いたように入る斑。野生のコクランなどによく見られるが,継続性は低い場合が多い。
源平柄
(げんぺいがら)
  葉脈を境に斑と地がくっきり分かれて入る芸。縞斑や覆輪が暴れて形成されることが多く,柄の安定性は極めて低い。
爪斑
(つめふ)
  葉の先端部に爪の先ほどの斑が入る芸。「チョイ柄」や「耳摺り斑」もほぼ同義。
峰斑
(みねふ)
  葉先にのみ散り斑状に白斑が入る芸。雪の残る山の峰イメージした名だろうか。
蛇皮斑
(じゃかわふ)
  曙斑のような色の地に,不鮮明な緑色の斑点が無数に入る芸。後述のバイラス斑である可能性も疑われている。
三光斑
(さんこうふ)
  ニ色の異なる斑が入り,葉が三色になる芸。
黄葉
(きば)
  通常より緑色の色素が少なく,葉が黄色に見える芸。虚弱な場合が多い。
烏葉
(からすば)
  通常よりアントシアンが多く,葉が暗紫色に見える芸。
本斑
(ほんぷ)
  葉に入る斑の中で,バイラス斑や地模様とは異なり,突然変異的に入る斑のこと。一般的に "葉の裏面にも斑がはっきり現れること" や "斑と地の境界がはっきりと分かれていること" などで区別する。出現頻度は低く,古典園芸においては珍重される。
地模様
(じもよう)
  変異ではない本来の葉の模様。ミヤマウズラやカンアオイの葉の模様などがこれにあたる。
バイラス斑
(ばいらすふ)
  良性ウイルス(生育に悪影響を与えず,感染力が極端に低いウイルス)によって生じる斑。多くは鮮やかな黄色で,斑と地の境界が不鮮明。ホシケイランやサイハイランの「星斑」やテンナンショウ等の「網斑」が該当すると考えられている。
びっくり斑
(びっくりふ)
  突然生じる継続性のない斑。一枚の葉にのみ出現し,縞斑や掃込み斑であることが多い。
幽霊
(ゆうれい)
  葉緑素を完全に欠き,葉が真っ白になる芸。当然,同化能力は一切無い。


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