■ 購入する前に
現在,ラン科植物の多くは絶滅の危機に瀕しています。
原因は一概には言えませんが,園芸趣味による消費がその一端を担っているのは明らかです。
栽培に挑戦する際は,十分な知識とモラルを身につけてから臨みましょう。
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■ 種類
ラン科植物は非常に多様性に富んだ一群です。
水浸しの湿地に育つものがあれば,カラカラの岩壁に張り付いているものもあり,雑草のように強健なものもあれば,信じられないほど虚弱なものもあります。
そのため「こうすれば育つ」といったような統一的な栽培方法は存在しません。
種毎にそれぞれの特性に合った管理をする必要があります。
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■ 周年の管理
3〜5月,多くのランが休眠から目覚め,成長を開始します。
日中暖かい日が多くなりますが,夜は氷点下を割ることもしばしばです。
冬の間,保護していた鉢を外に出すのは,桜の花が散ってからにしましょう。
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6〜9月,気温が上がり真夏日も多くなります。
亜熱帯の一部の種を除き,30度を超える高温はランにとって大きな負担です。
植物が出来る限り涼しく過ごせるよう,置き場所や灌水を工夫します。
施肥は9月中旬以降,猛暑が去ってからの方が安全です。
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10〜2月,休眠期は温度変化ができるだけ少なくなるように管理します。
耐寒性は種によって大きく異なりますが,凍結を好む植物は存在しません。
北方の植物でも凍らない程度の保護をした方が無難です。
また,冬場は低温のほか乾燥にも注意します。
写真のように,植物を鉢ごと発泡スチロール箱やビニール袋に入れて管理するのも一つの手です。
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■ 日照
"芽出しは明るく,花後は暗く" これが基本です。
出芽の時期にきちんと日を採らないと,茎が細く徒長し倒れやすくなってしまいます。
一方,葉が完全に展開し切ってからも強光に当て続けると,葉が傷み,生育に悪影響を及ぼします。
生育初期はがっちり育て,植物体が固まった後は地上部をできるだけ長く残せるように管理しましょう。
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■ 水遣り
上で述べましたように,ランは種類によって求める水分量が大きく異なります。
灌水は「表土が乾いたらタップリと」というペースが基本となりますが,やはり一概には言えません。
栽培環境や種類に合わせて工夫して下さい。
■ 肥料
野生ランの栽培において,意外なキーとなるのが肥料です。
貧栄養地帯に多く自生するランにとって,肥料は余計なものと考えられがちですが,上作を望むには必須の要素となります。
植物体に力をつけ,がっしりと育てることは,病害虫への耐性や増殖率の向上にも繋がります。
少なくとも,置き肥及び開花後の液肥くらいは施した方が良いでしょう。
■ 用土
野生ランの栽培において,最も一般的に用いられているのは鹿沼土・赤玉土・軽石といった無機用土です。
これらの素材は当たり外れが少なく,いつでも安定した成果を得ることができます。
基本的に2〜3種類を混合して用いますが,その比率に決まりはありません。
それぞれの砂の特性を理解し,目的に応じて調節しながら利用して下さい。
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砂に次いでよく利用されるのが水苔・クリプトモスといった有機用土です。
特に水苔は通気性・保水性・殺菌性に優れた万能用土で,どんな植物に対しても安心して用いることができます。
また,生水苔は見た目が美しいうえ,鉢内の環境安定性を飛躍的に高めてくれます。
ただ,比較的値段が高いこと,そして毎年植え替える必要があることが欠点です。
また,腐葉土やクリプトモスはカビに侵されやすく,使い方を誤ると植物を一気に傷めてしまうことがあります。
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上記の用土のほか,着生ランの植え付けにはヘゴやコルクを用いることがあります。
植え替えがいらず,野趣にあふれる栽培が可能なため,野生ランの栽培にも多く用いられますが,栽培環境をより選ぶ必要が生じます。
高価な品種や乾燥に弱い種は,鉢植えでの栽培の方が無難です。
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■ 鉢
意識し辛いものですが,鉢の種類によっても鉢内環境は大きく変わります。
その原因として最も大きいのが鉢の浸水性です。
素焼鉢などの多孔質の鉢は浸水性が高く,多くの水を吸収して外に逃がします。
この時気化熱が生じるため,浸水性が高い鉢は乾きやすく,冷却効果が高いのです。
こういった鉢は,空気を好む着生ランや,暑さを嫌う寒冷地のランに向きます。
一方,ビニールポットや化粧鉢は浸水性がほとんど有りません。
鉢内の環境が安定する代わりに,冷却効果や通風性は失うことになります。
小苗や低地のランに向く鉢です。
なお,ビニールポットは側面に複数穴があり,深さがあるものを選ぶと作が良くなります。
■ 温室
冬場の温度の確保はもちろんですが,湿度の維持・風雨からの保護などにも非常に便利です。
ガラス温室とは言わないまでも,ビニール温室くらいはあったほうが,小型野生ランの栽培は楽になると思います。
なお,温室の中に植物を入れるのは,きちんと換気や遮光を調節してからにしましょう。
小さな温室ですと,置き場所や通風の程度によっては,温室の中が一瞬で40度を超えてしまう事もあります。
新しい設備を導入する際は慎重に行うべきです。
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