クマガイソウ  Cypripedium japonicum
特徴
  茎は高さ20〜30a,先端に扇状の大きな葉を2枚つける。 晩春,葉の間から花茎を伸ばし,約8aの大きな花を通常1つ咲かせる。 唇弁は黄白色に半透明の斑紋,袋状でよく目立つ。
分布
  北海道南部〜九州地方
開花期
  4月〜5月
自生環境
  腐植質の多い低地林床。
備考
  絶滅危惧II類(環境省)
現状
  花が大きく,草姿も野趣にあふれ魅力的なため,園芸的な人気が非常に高い種です。 大々的な採集が各地で行われ,数千株の群落が一夜にして壊滅することもあったと聞きます。 ホームセンター等でも販売されるほどメジャーな植物ですが,未だに盗掘が続いています。
  現在,自生は保護された少数の群落が残るのみとなりました。生産は専ら林下への植栽によって行われているようです。

● 購入
  販売されている個体は根茎が短く切られていることが多く,購入時の見極めが大切です。 本種は本来,一株につき40〜50aの根茎が付いているのが自然な状態であるため,根茎が10a程度の株はほぼ切り花状態であると考えたほうが良いでしょう。 持ち込まれた個体を選ぶか,専門店で根を見せてもらってから購入するかしたほうが安全です。
  なお,関東の低地では南方由来の個体のほうが,北方のものより大分育てやすいようです。 現在流通している個体の多くは九州南部,若しくは東北地方由来の個体になります。 出処を知る機会は少ないかもしれませんが,選べるのであれば,南方系の個体を育てましょう。

● 管理
  経験上,クマガイソウを枯らす原因として最も多いのは「水のやり過ぎ」です。 クマガイソウは根茎が長く伸びるため,大鉢,若しくはトロ箱等で栽培されることが多いかと思いますが,そういった鉢は通常よりずっと乾きにくいものです。 大きなトロ箱で植えた場合,真夏を除いて水やりはほぼ不要になります。 表土が少し乾いたからといって水を遣っていると,鉢内は常に水浸しになる筈です。
  また,本種は葉が広く大きいため,湿度は高く保てるよう管理します。 強光や空気の乾燥は葉の痛みの主な原因です。 2枚しか無い葉の不調は作落ちに直結しますので,鉢はやや暗めの湿った場所に置くよう心掛けましょう。 葉の縁からの枯れこみがある場合,湿度不足が疑われます。

● 植え込み
  用土は余り気にしません。 よく腐葉土等を用いると良いと言われますが,鹿沼土単用でも全く問題有りません。 下手に有機質用土を多く用いると,白絹病や根腐れの原因になります。 少し鋤き込む位なら良いかもしれませんが,無機質用土を主体に植え込んだ方が安全です。
  鉢は当然ですが大きい物を用います。 深めのトロ箱が最も便利です。 なお,案外環境を選ぶ植物であるため,庭植えは余り推奨できません。 庭植えする場合,雑草の排除・光量の調節・土の改善は最低限やっておくべきです。

● 増殖
  適切に管理していれば毎年2〜3倍の速度で殖えていきます。 下の写真の個体も2010年に1芽を購入したものです。 最初の1芽を中心に,扇状に根茎が広がっているのが判ります。
  肥料を遣らなくても順調に増殖しますが,花付きがやや悪くなります。 花を見たい場合は置き肥に加え,秋に液肥を施しましょう。
                                   
2012.11.4  水が多いと根が詰まる 2012.11.4  少し乾かし気味で調度良い? 2013.3.16  早春に出芽
2012.6.10  明るい日陰で管理 2015.4.29  いつの間にか増えてわさわさに… 2015.4.29  植え替えが遅いと花が潰れる

変異個体
白花素心花
  クマガイソウの白花素心。 本種の素心花としては最もよく見るタイプで,北海道及び青森県が産地と言われています。 各地で増殖され,発見当時に比べれば安価に入手できるようになりました。
黄花素心花
  こちらはクマガイソウの黄色素心。まるでレブンアツモリのような花色で,花形も白花素心とは大分異なります。
準素心花
  青森県産の準素心花「妖精」。側花弁のブロッチが極端に少ない品種です。準素心花とも、無点花と言い切り難い、微妙な花ですね……
散り斑
  流通は殆どありませんが,クマガイソウの斑入り個体も複数発見されています。 その殆どが地味な縞斑〜散り斑ですが,中には優れた個体も存在するようです。 ただ,クマガイソウは出芽時の生理障害で,純白のビックリ斑が入ることがしばしばあります。 購入時は本斑かどうか,しっかり見極めるべきでしょう。
縞斑?
  よく目立つ黄縞の個体。 芸は完全に固定していますが,本斑かどうかは怪しいところ。 似たようなバイラス斑の個体はしばしば見かけますが,本個体はどうやらそれとも異なるようです。
関連種
ヒタチ
クマガイソウ

  茨城県に分布するクマガイソウの変種。茎〜花茎が完全に無毛です。


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