オオミズトンボ
- H. linearifolia var. linearifolia -



2013.7.30

  国産のハベナリアとしては最も希少な種のひとつ。 千葉県成東町の自生地が有名だったのですが,遷移・近交弱勢が進み,開花するような大きな個体は見られなくなってしまいました。 他にも関東〜東北地方に幾つかの自生地が知られていますが,いずれも極狭い範囲に限られます。
  因みに本種の変種として,花が小さく緑白色かつ距の長さが4mm程しかないヒメミズトンボ H. l. var. brachycentra が存在します。 更に,ヒメミズトンボの中で距の長さが15mm程度になる個体群は "オゼノサワトンボ" と呼ばれ区別されているようです。 両者とも,国後島・北海道・尾瀬において自生が知られています。

2013.7.30

  写真の個体は東北地方のもの。 ミズトンボと同様に栽培できます。 かつて箱根周辺の個体が出回っていた時期があったそうですが,自生個体・栽培品ともに絶えてしまったようです。 栄養繁殖しやすい優れた系統だったそうで,非常に残念。

2013.7.30

  葉は数枚のみです。

2013.5.5

  春の芽出し。 ミズトンボもそうですが,この時期に陽を十分に採らないと,徒長していずれ枯れてしまいます。

2014.9.29

  ビン出し二年目の球根。 関東地方由来の個体です。 現在,業者や趣味家の手によって,複数系統の個体が培養増殖されています。
  「絶滅の渦」という言葉がありますが,本種の現状はまさにそれです。 同一産地の個体同士では近交弱勢によりまともな種子が出来ず,それぞれの自生地は交流が起こりえないレベルで離れています。 また,湿地とはそもそも遷移するもの。 現在本種が生育している低層湿原が,数十年後も同じように残っているという保証はありません。 自生地保全にのみ傾倒するのではなく,より能動的な保護・増殖活動が望まれます。

2015.5.5

2015.5.5

  実生の中にはこんな斑入り個体も。

2015.8.7

  クロロシスが起きて曙斑状になった個体。花茎や花からも緑色が抜け,純白花のように見えます。固定すれば面白いかも…


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