カキランの品種
- Varieties of E. thunbergii -


栽培が容易なEpipactisとして知られるカキラン。
渋い花色や,いかにも野生ランらしい草姿など,趣味家の心をくすぐる植物です。
このページでは,過去に発見されたカキランの変異個体を紹介します。

※ 「軽井沢カキラン」タイプの個体は背景(茶),国外の種は背景(赤)で表示しています。


色花 / 奇花・葉変り / 斑入り / カラス葉 / 地域個体群 / 外国産の種



色花
加賀の緋
(かがのひ)
  1990年代,石川県能登半島で発見された銘品。 赤花カキランの代表的品種であり,側花弁が目の覚めるような朱色になる。 流通量は少なくないが,未だやや高価な品種である。
朱富士
(べにふじ)
  岩手県産の赤花。 「加賀の緋」に比べると発色は少々劣るものの,より丈夫で育てやすい。 外見での区別は難しいが,本種の方がやや花弁がふっくらしており,葉も長くなる傾向がある。また,唇弁の黄色い斑紋の形状が異なるため,その点でも区別は可能。

(くれない)
  秋田県産の赤花。 花は上記二品種と大差ないが,株元の軸が灰色に染まる点で区別できる。
火の鳥
(ひのとり)
  美しい緋色のカキラン。「加賀の緋」に近い坪で採取された個体と言われており,花の形もよく似ている。性質はやや弱く,しばしば「加賀の緋」と混同されて流通しているそう。かつては「加賀の緋」の名前で扱ったほうが高く売れたらしい。
紅小町
(べにこまち)
  「加賀の緋」の棚内交配で生じた品種。 赤花品種の中には同様の経緯で生まれたものも多い。 赤花の銘品「炎」も「火の鳥」の自然実生とされている。 こちらは上萼片まで真っ赤に染まる稀な個体である。
越の誉
(こしのほまれ)
  サーモンピンク色の花を咲かせる品種。 名前から新潟県で発見された個体と想像されるが,詳細は不明。 花は大きく,側萼片が真横に開く特徴的な花形をしている。 非常に増えがよく,1年で4倍近くになることもしばしば。 「ピンク花」や「赤花」として多くの個体が販売されている。
オレンジ花
  花色が樺色(オレンジ色)のカキラン。 産地は北海道と言われているが,花や全体の雰囲気は「越の誉」によく似ている。 ラベルがなければ区別できないかもしれない。
濃色花

  岩手県で発見された濃色花。 これぞ「柿色」といった風の花色である。 花弁の開きが悪いのが少々残念。 葉は大きく,非常に大型になる。
柿美人
(かきびじん)

写真
  山形県にて発見されたクリーム花。 淡い色合いの花弁と,細くスマートな草姿が相俟った,とても上品な雰囲気の個体である。 日を強く採ると花色が濃くなってしまうので注意。
クルシア
(仮称)
  オレンジ花とカラス葉のニ芸品。軽井沢カキラン系の”オレンジ花”より、はるかに真っ当なオレンジ色の花を咲かせる。カラス葉の色も比較的濃く、全体的にバランスのとれた優れた個体。
カキの雪化粧
(かきのゆきげしょう)
  唇弁のみから赤系の色素が抜けた,非常に珍しい変異を持つ個体。 花弁は通常のカキランと同じだが,唇弁が黄花素心花と同様になる。
黄花素心花
  花から完全に赤系の色素が抜けた個体。 萼片も黄緑色をしており,清楚な雰囲気で好ましい。 山形県と福島県のものが多く流通しており,それぞれ草丈や花型,斑紋の位置などが異なる。写真は山形県産。花弁の幅がやや狭く,背丈が高い。
黄花
  側花弁から赤系の色素がほぼ抜けた個体。 唇弁や萼片に赤色が残る点で "黄花素心花" とは異なる。 東北地方に多いが,似たような個体は各地で見られる。

「岩手濃色」 「山形烏葉」 「福島産」 「八丈島産」 「柿美人」

奇花・葉変り
七変化
(しちへんげ)
  カキランの変異個体における最高峰。 奇花(多舌)・八房・細葉・矮鶏・帯化・巻葉・折鶴葉と,名前の通り7つの芸を持つ。 同様の奇形花は「竜王」,「カキの羅紗舞」ほか数系統が発見されたが, いずれも性質が弱く,「カキの獅子舞」を除いて全て絶種してしまった。
カキの獅子舞
(かきのししまい)
  子宝咲きの銘品。 唇弁と蕊柱が複数生じる,不思議な花を咲かせる。 子房が長く伸びるのも特徴的。
紅孔雀
(べにくじゃく)
  後暗みの黄中透け〜縞斑,八重咲き(蕊柱も増える子宝咲き)のニ芸品。 東北地方産。
  追記(2016.8.9):左の写真は、山形県産とのことで手に入れた縞斑と多弁花の多芸品です。滅多に現れないであろう同芸品ですが、同一個体なのでしょうか。
端午(仮称)
(たんご)
  貴重な兜咲きの品種。本来の”兜咲き”の意味(側花弁が半唇弁化する芸)とは異なるが、しわくちゃで寸詰まりの花弁・萼片による連想でから、このように呼ばれている。長生蘭の「端午」と似た芸で、まるで欠けてしまったかような唇弁が可愛らしい。葉も厚ぼったく詰まった丸葉になる。新潟県秘蔵の変化花。
カキの羅紗舞
(かきのらしゃまい)
  厚葉羅紗と奇花の二芸品。 花は「七変化」と同様,多舌(唇弁が2〜3枚)となる。 葉も柚子肌で,遠目から見ても羅紗と判るほど。 草丈は低く,締まった印象で可愛らしい。
柿丸
(かきまる)

写真
  ころっとした丸花を咲かせる銘品。 山形県にて,趣味家により発見された。 葉は丸く,通常より幅が広い羅紗葉。 唇弁も幅広で,花色はやや濃色気味。
夜叉丸
(やしゃまる)
  東北地方産の奇形花。 サギソウの「おぼろ月」のような花を咲かせる。
カキの牛若丸
(かきのうしわかまる)
  矮鶏カキランの秀品。 草丈は低く,葉・花は丸みを帯びる。 花色は黄色味が強く,軸も青い。
  他に矮性カキランの銘品としては,岩手県産の「義経伝」などが存在する。 こちらは山形県産の大型品種「弁慶」と対に命名された個体であり,例年草丈10a程で安定して開花するそう。
六歌仙
  静岡県にて発見された完全な六弁花の個体。 同様の芸を持つイソマカキランとは異なり,花弁に唇弁の要素が一切残らない。
  追記(2015.6.17):先日,「六歌仙」は柱頭の形状がイソマカキランと全く違うと教わりました。実際に見比べてみると…確かに,違います。イソマカキランは葯帽が退化しているのに対し,こちらは通常のカキランと同じ構造です。ちなみに、同様の変異個体は千葉県でも発見されており,こちらは「三弁花」と呼ばれているそうです。

斑入り

(おきな)
  細弁の紫花と白覆輪(爪斑)の多芸品。 紫と言うよりは,青味掛かったサーモンピンクのような花色をしている。 他にはない独特な色合いの花である。 花がうなだれ気味に付き,花弁も少々垂れるところも特徴的。 似た品種に「秋月の舞」が存在するが,こちらは通常の花色。
  「カキ乙女」(黄覆輪),「カキの縞王」(白縞)など,斑入りの銘品には細弁花との二芸品が多い。
葉山の貴婦人
(はやまのきふじん)
  後暗み中透けの普及品。 現在無銘の中透け品として出回っている個体の多くは本品種だと思われる。 産地は明らかになっていない。
茶花紺覆輪
  軽井沢カキランの紺覆輪。 新潟県産とされている。 全葉に安定して斑が入るが,目立たないのが玉に瑕。
  軽井沢カキランの斑入りとしては,他に黄中透けも多く出回っている。 「葉山の貴婦人」と同様,派手な斑の割に育てやすい秀品であり,柄行きも安定して美しい。 こちらは産地・来歴共に不詳。
白覆輪
  出芽時から柄が目立つタイプ。 「翁」と同様,本個体もやや細弁気味で,花弁には淡い紫色が乗る。
  カキランの斑入りとしては,後冴えの黄覆輪・白覆輪・後暗みの中透けが最も多く流通している。 優れた個体が数多く選別されているが,総じてルーツ不明の無銘品。 柄が暴れることも多いようで,イマイチ系統が把握しづらい。
黄覆輪
(山形県米沢市産)
  ある意味珍しい,来歴がはっきりした黄覆輪。 本個体も含め,烏葉や斑入り,奇花など,カキランの変異個体には山形県で発見された物が多い。

カラス葉
大黒天
(だいこくてん)
  東北地方産,広葉系の烏葉。 赤みが強い特徴的な色合いの個体である。 葉長は短く,全体的に引き締まった草姿をしている。 葉重ね,及び発色も良い一級品。
  似た葉姿の銘品として,山形県産の広葉烏葉「黒鳥」などが存在する。 こちらは葉に赤みが差さず,発色がやや劣る。 葉に赤みがさす烏葉の銘品には,他に「葉山錦」が知られている。
大魔神
(だいまじん)
  カラス葉の最高峰に君臨する銘品。 山形県産。 葉色は濃く,芽出しから時間が経っても色褪めしない。 がっしりとした草体を持ち,葉幅が広い大型種。 葉先が弱く巻き上がり,クイッと上向くのが最大の特徴である。 まがい物が出回っているので要注意。
カラス天狗
(からすてんぐ)
  岩手県産。 日本のカラス葉カキランとしては最も色が濃い。 葉は苞葉も含め長くしなだれ,全体的に華奢な雰囲気が漂う。
黒龍
(こくりゅう)
  山形県産。「大魔神」によく似ているが,葉先は垂れ下がる。 葉幅もそれほど広くなく,上記2種の中間的な特徴を持った個体と言える。
カラス葉
(山形県産)
  カラス葉カキランとして数千円程度で販売されているもの。 多くは山形県産だが,それぞれのルーツはバラバラ。 近年は青森県・宮城県・岩手県などの無銘品も流通している。 左の個体はやや濃色花。

地域個体群
屋久島カキラン
  屋久島の山岳地帯の個体群。 矮性で青軸。花は準素心と言ってもいいような黄花が多い。 園芸品種として人気があり,流通量も多い。 他の地域のものに比べ,種子の発芽率がやや良いらしい。
八丈島カキラン
  八丈島の個体群。 花は黄色味が強いと言われ,全体的に小型化する傾向がある。 カキランは標高が上がるにつれ小型・黄花寄りに変化するようだが,他に島嶼化の影響も? なお伊豆諸島のカキランは総じて似たような特徴を持つ。
軽井沢カキラン
(茶花カキラン)
  本州の日本海側から長野県にかけて見られる(と言われている)集団。 その花色から「茶花カキラン」とも呼ばれる。 花形が「越の誉」や「樺色カキラン」等に似て特徴的で,全体に大型の物が多い。 非常に丈夫だが,種子稔性が低く,一般的なカキランとは様々な点において異なる。 自生の状態を未だ確認できていないため,交配種の疑いも…
イソマカキラン

写真
  唇弁が花弁化したカキラン。 側花弁も含め,それぞれの花弁には僅かな唇弁化が見られることが多い。 イソマとは鹿児島県磯間嶽のことを指すが,奄美大島等の島嶼を含む南九州全域に分布している。 厳密にイソマカキランと呼ぶべきものかは不明だが,同様の六弁花は関東地方でも発見されているとのこと。
  葯帽が小さく退化しており,結実率が非常に良い。また比較的発芽率も良く,飛び込み実生がしばしば得られる。 カキランに比べ大型で,自生環境も異なる(草原性)ため,別種ではないかとの考えもある。
イソマカキラン
(黄花素心花)

写真 (同上)]
  希少なイソマカキランの変異個体。 完全な青軸で,黄花素心にあたる芸を持つ。 近年は「幸輝」の銘で流通している模様。
ミヤマカキラン
(仮称)
  高山に生じるの矮性カキラン。 形態的には屋久島の個体群に近いが,より小型のものが多い。 側花弁は黄色味が強い。

外国産の種
Epipactis
mairei

  中国産のカキラン属。 通称「四川カキラン」。 花や葉は赤っぽく,軸の上までアントシアンが乗る。 葉の縁が波打ち,全体に細かい毛が生えているのも特徴。 丈夫で育てやすいため,一般的な園芸店でもよく販売されている。
Epipactis
palustris

  ヨーロッパに分布するカキラン属。 写真はこちら。 唇弁が白色のため,「白花カキラン」としてしばしば販売されているが,国産の変異個体ではないので注意。
Epipactis
gigantea

  アメリカ大陸に分布するカキラン属。 大型で非常に丈夫。萼片が大きく反り返り,花弁の色は濃い。下記のような交配品種や,烏葉の銘品「Serpentine Night」なども流通している。
不明種
(カラス葉)
  濃色カラス葉カキランとして購入したもの。 どう見ても別種の血が入っている。 上記の「Serpentine Night」系の交配かと思われるが,詳細は不明。 芸自体は素晴らしく,びっくりするほど丈夫。


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