クモキリソウ属  [全種名リスト]
- Liparis -


クモキリソウ属(Liparis)のランは姿かたちが面白いうえ,未だに新種が発見されている興味深いグループです。
このページでは普通種から希少種まで,日本に自生する全てのリパリスを紹介します。

※ クモキリソウ属の栽培種リストはこちら


落葉性の種 / 常緑性の種 / 着生種



スズムシソウ クロスズムシソウ フガクスズムシ クモキリソウ ジガバチソウ

■ 落葉性の種  - Deciduous Species -

和名 学名 分布 特徴
スズムシソウ
写真解説
Liparis makinoana var. makinoana 北海道〜九州 日本産リパリスの代表種。透明感の有る淡茶緑の唇弁が美しい。
花色の変化は比較的少なく,完全な緑花の個体はまれ。
(クロスズムシソウ)
写真解説
四国地方 四国特産のスズムシソウの濃色花。
野生個体はほぼ見られないが,近年は実生で増殖されたものが大量に流通している。
かつて,野生のクロスズムシソウは花茎まで真っ黒だったそう。現物が見られないのが残念。
セイタカスズムシ
写真解説
Liparis japonica 北海道〜九州 スズムシソウに似るが,花茎がより長く花は小さい
唇弁は四角形〜円形。花色の変化は大きく,淡紫〜淡緑色と様々。
固有の特徴を持った個体群が各地で発見されており,独立種として扱うべきか議論が為されている。
アキタスズムシ
写真解説
Liparis. sp 北海道〜九州 花は濃い紫褐色から淡緑色。唇弁は長さ7mm幅5mm程度とやや小さい。
唇弁は紫褐色に濃紅の脈,全体に丸みをおび,セイタカスズムシと同程度の大きさ。
以前はアキタセイタカスズムシと呼ばれ,セイタカスズムシの一型として扱われていた。
秋田型とされていた集団だが,同様の個体は四国や北海道等,他の場所でも多数発見されている。
ヒメスズムシソウ Liparis nikkoensis 栃木県・長野県 唇弁は暗紫色で縦に黒色の脈があり,長さ4mm幅3mm程度,卵形で全縁,先は急に尖る。
全体的にスズムシソウとジガバチソウの中間のような外部形態である。
近年の自生個体の報告は皆無。
フガクスズムシ
写真解説
Liparis makinoana var. koreana 北海道〜九州 ブナ林樹帯の古木にコケ類と共に着生する。花は紫褐色で比較的大きい。
近年,DNA分析の結果,スズムシソウに近縁であることが明らかになった。
オオフガクスズムシ
(エゾノクモキリ)
写真解説
Liparis koreojaponica 北海道 その名の通り,フガクスズムシをそのまま大きくしたような種。北海道特産。
林床に生育し,樹上に着生することは極めて稀。
かつてはセイタカスズムシの一型として扱われており,コウライスズムシソウと呼ばれていた。
石狩山地周辺でよく見られ,自生地では花茎が60cmを超えることもあるという。
クモキリソウ
写真解説
Liparis kumokiri 本州〜沖縄県北部 この仲間では最も普通な種。花は安定して淡緑色。自家受粉でほぼ確実に結実する。
沖縄県の個体群は固有の特徴を持ち,別種の可能性があると考えられている。
シテンクモキリ
写真解説
Liparis purpureovittata 北海道・本州中部 別名チクマジガバチ・ナンブクモキリ・チクマクモキリ・アズミクモキリ。
2008年に新種として記載された。
花の形はクモキリソウに似ているが,唇弁はふくよかでより大きい
萼片・花弁は茶褐色唇弁は淡緑色の地に暗紫色の斑紋が入る
ウスダクモキリ
写真解説
Liparis. sp 長野県 ジガバチソウとクモキリソウの中間的な外部形態を持つ未記載種。
長野県に分布する不思議なリパリスのひとつ。
現在確認されている自生地は,信州の薄田氏によって発見された一箇所のみ。
クロクモキリ
写真解説
Liparis koreana var. honshuensis 本州中部 クモキリソウに似るが,花全体が黒紫色で,唇弁がより角張った形をしている
花茎はひょろ長く伸び,花は花茎の先端に密集してつく
学名からも判るように「クモキリソウの色花」とは全くの別物。果実も非常に付きづらい
全国的に稀な種であるが,富士山周辺では比較的多くの個体が確認されている。
シマクモキリソウ Liparis hostaefolia 小笠原諸島 小笠原諸島の固有種。唇弁は淡紫〜淡緑色,長さ幅共1cm程で円形に近く,先端はやや反巻き気味に開く
花は全体的にクモキリソウ3割・スズムシソウ7割といったような雰囲気。
ここ数十年は生育が確認されておらず,絶滅した可能性もある。
奄美大島にも分布すると聞いたことがあるが,果たして?
近年,本種に似た植物が,九州地方及び東北地方で相次いで発見された。専門家の分析が待たれる。
ジガバチソウ
写真解説
Liparis kurameri var. kurameri 北海道中部〜九州 和名は花の形がジガバチに似ていることに因む。花色は濃紫〜淡緑色と変化が大きい。
葉柄は短く,葉は地面とほぼ平行に付く。葉の表面は網状の葉脈が目立つ。
ヒメジガバチソウ Liparis kurameri var. shichitoana 伊豆諸島 ジガバチソウの島嶼型。和名はジガバチソウに似てより小型なことに因む。
クモイジガバチ
写真解説
Liparis truncata 本州・四国・九州 シノブやコケ類と共に大木の樹冠に着生する。分布は広いが局所的で,数も非常に少ない。
全体にジガバチソウに似るが,唇弁が広く短く,台形に近い形となる
また,ジガバチソウに比べて側萼片が太く短い。近年ようやく無菌培養苗が販売されるようになった。
ギボウシラン
写真解説
Liparis auriculata この仲間では珍しく,湿地帯に好んで生育する。
葉はギボウシの幼苗によく似ている。バルブは扁平で,根は殆ど伸ばさない。
やや珍しいランだが,八丈島等の離島にも分布が確認されている。
ササバラン Liparis odorata 四国・九州・沖縄県 和名は葉がササに似ていることに因む。他の種に比べて唇弁が小さく,側萼片が幅広い。
草原性の植物であり,イネ科植物などに埋もれるようにして生育していることが多い。


コクラン シマササバラン ユウコクラン ユウコクラン(素心)

■ 常緑性の種  - Evergreen Species -

和名 学名 分布 特徴
コクラン Liparis nervosa 茨城県〜九州地方 初夏に黒褐色の花を5〜10個ほど咲かせる。葯帽は淡緑色であり,葉の表面の光沢は弱い。
分布域内では比較的個多数の多いランである。
ユウコクラン Liparis formosana 本州最南部
九州地方南部以南
斑入りの個体は "大黒蘭" と呼ばれ,古くから親しまれている。
葉の表面には強い光沢があり,全体に大型で,花の数も多い。
コクランとは,蕊柱の先にある葯帽が黒紫色である点で区別できる。
(シマササバラン)
写真解説
Liparis formosana var. hachijoensis 伊豆諸島 ユウコクランの変種とされていたが,現在はシノニムとして扱われている。
基本種に極めて似るが,花がやや小さく唇弁の縁に緑色の部分がある点で区別されていた。
コガネユウコクラン Liparis formosana f. albovariegata 沖縄県 ユウコクランの種内変異で,葉に黄金色の斑があるものとされる。
キバナコクラン Liparis nigra var. sootenzanensis 屋久島 ユウコクランの素心花が本種と誤認されていることが多々あるが,全くの別種。
草姿はユウコクランに似るものの,バルブは小さく,葉はより広い。
花は黄緑色で,唇弁の辺縁部はギザギザになる。
台湾にも分布するがやや稀。国内での発見は屋久島での数例のみ。


チケイラン コバナチケイラン キノエササラン コゴメキノエラン

■ 着生種  - Epiphytal Species -

和名 学名 分布 特徴
チケイラン
写真解説
Liparis bootanensis 四国・九州南部
沖縄県
扁平な偽鱗茎を持ち,そこに通常1枚の葉を付ける。花茎も扁平。
花の数は以下3種に比べやや少なく,大きさは1p弱。蕊柱には半透明の翼がある。
キノエササラン
写真解説
Liparis uchiyamae 奄美大島 かつて奄美大島で一度だけ確認された稀産種。
チケイランに似るが,球形の偽鱗茎2枚の葉蕊柱の翼が無いことで区別される。
花はチケイランと変わらない大きさだが,萼片が大きく反り返る
また,種子は殆どつかず,人工授粉してもさく果ができないことが多い。
希少な種の割にとても丈夫で,増殖率も年二倍ほど。凍らせなければ大概の寒さも平気。
コバナチケイラン
写真解説
Liparis elegans 西表島 かつて "西表島のキノエササラン" と呼ばれていたもの。
葉や偽鱗茎はキノエササランに似るが,全体に小さい。花の大きさも5mm程
性質もキノエササランによく似ており,丈夫で盛んに栄養繁殖する。
近年は比較的安価に入手出来るようになった。
キノエササランとの他の相違点としては,結実率が非常に良いことが挙げられる。無菌培養も容易。
コゴメキノエラン
写真解説
Liparis elliptica 奄美大島・屋久島 種の保存法指定種。種子以外の一切の取引が禁じられている。
日本では奄美大島のみに産するとされていたが,後に屋久島でも発見された。
無菌培養が容易で,栄養繁殖も盛んに行う。


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