サギソウの品種
- Varieties of P. radiata -


サギソウは古くから佳品として知られ,各地で多くの変異個体が選別されてきました。
しかし,栽培がやや難しいためか,普及品として世に知られている品種はごく僅かに過ぎません。
このページでは,そんなサギソウの銘品を,出来る限り多く紹介していきたいと思います。

※ 本種の詳しい解説はこちら


変わり花 / 大輪花 / 芳香花 / 覆輪 / 散り斑 / 中斑 / 黄葉 / その他葉芸 / 青葉



変わり花
飛翔
(ひしょう)
  「銀河」と並び,広く普及している銘品。 側萼片が唇弁化する,所謂獅子咲きの芸を持つ。 花期はやや遅く,8月下旬頃。 子房は退化して捻じれず,花は上下逆さに展開する。 萼片は全て白色,唇弁の切れ込みは浅い。
  1980年台に登場した品種で,当時は非常に高価なものであった。 発見の経緯は明らかになっていないが,花期や普及状況から西日本の産ではないかと言われている。
大飛翔
(だいひしょう)
  近年流通し始めた獅子咲き品種。 新潟県産と言われているが,詳細は不明。 花が「飛翔」のように逆さまにならないことが多く,花弁の切れ込みがより深い。 花期は「飛翔」と殆ど変わらないか,やや早い程度。
おぼろ月
(おぼろづき)
  昭和57年,兵庫県にて発見された変わり花。 子房が退化し,蕊柱も欠如した不思議な花を咲かせる。 唇弁は小さく,通常の半分以下程の大きさ。 花期は8月中旬〜下旬。 そこそこ丈夫で,サギソウの変わり花としては飛翔についで多く流通している。
八月
(はづき)
  「おぼろ月」と同坪で発見された変わり花。 蝶咲き(唇弁が複数存在する変化咲き)の品種だが,花が崩れ易く,うまく芸が出ない場合が多い。 萼片は緑色。 染色体にも異常があるようで,ほぼ不稔。 また,性質は非常に弱く,球根が肥大し難い。 積極的に肥培するより,生水苔などで環境良く育てたほうが無難な品種。 砂植えでは生育不良になる。
  追記(2014.12.15):何故か「飛翔」と混同されることが多いようで,ネット上でも間違った画像が散見されます。 「八月」として「飛翔」が販売されたことがあったのかも知れません。 購入の際はご注意ください。
緑星
(りょくせい)
  香川県小豆島にて発見されたとされる,緑花のサギソウ。 小輪,かつ花弁の数が通常より多くなる奇花でもある。 少し作りづらく,古い品種のわりに知名度・普及率が低い。 染色体の異常のためか,稔性は全くと言っていいほど無い。 花期は非常に遅く,9月中旬から下旬まで咲いている。

「飛翔」 「大飛翔」 「八月」

大輪花
玉竜花
(ぎょくりゅうか)

-写真提供-
-Clupe様-
  言わずと知れた四倍体の大輪花。 唇弁の切れ込みが深く,花型も美しい。 1980年代,岩田謙一氏により三重県の湿原で発見された。 花期はやや早咲きで8月上旬。 株に力がつくと,花の直径が5aを超えることもある。 なお,球根は特に大きくならず,通常のサイズ。

(みやび)

-写真提供-
-Tocchan様-
  来歴不明の大輪花。 「玉竜花」よりも唇弁の切れ込みが浅く,細かく,繊細な雰囲気。 花期もより遅く,8月中旬〜下旬。 流通の状況から,愛知県で選別された個体かも?
十五夜
(じゅうごや)
  以前サカタのタネで販売されていた大輪花。 詳細不明。

芳香花
武蔵野
(むさしの)
  東京都世田谷区の休耕田から発見された芳香花。 群生させると爽やかな香りが漂うが,環境や年によっては余り匂わないことも。 花期は7月中旬〜下旬と比較的早い。
  現在は見る影も無いが,かつて世田谷区には多くの自生個体が見られたそう。 「武蔵野」はその数少ない生き残りの一つであり,栽培家によって保存された植物の好例である。
香貴
(こうき)
  詳細不明の芳香花。 花期はやや遅く,8月上旬〜中旬。 香りは「武蔵野」に比べると,若干劣るように感じる。
  他に香りを有する品種としては,かつて岩田謙一氏が栽培されていた,岐阜県産青葉「中津川」が挙げられる。 こちらは現存するか不明。

覆輪
銀河
(ぎんが)
  サギソウの代表的品種。 比較的派手な白覆輪で,知名度・流通量共に第一位を誇る。 「銀河」の銘は昭和30年に神代植物園の山田菊雄氏によって付けられた。 栽培の歴史は古く,江戸時代に発刊された『草木錦葉集』にも収録されている。 花期は8月中旬から下旬。
新銀河
(しんぎんが)
  従来の「銀河」よりも鮮明で美しい斑を持つ,という触れ込みのサギソウ。 また,「銀河」に比べやや小輪で,唇弁の切れ込みにも特徴があるとのこと。 どんな来歴の個体なのかは不明。
  ちなみに,サギソウの白覆輪は「彗星」や「銀河」の他にも多数の系統が発見されている。 これらの個体が区別されて流通してきたのかは疑問が残るところであり,現在「銀河」と呼ばれている品種も全てが同一個体由来のものかは疑わしい。
彗星
(すいせい)
  切れの良い白覆輪の銘品。昭和後期、三重県の伊賀地方にて発見された。花期は銀河よりも遅く、斑は比較的派手である。
  追記(2014.01.27):複数の文献を確認してみたところ,斑の幅を「銀河」よりも広いとしているもの,狭いとしているもの, 両方が存在することが判りました。 結局,斑だけでは「銀河」と差別化出来ない品種のようです。

(かがやき)
  黄覆輪の代表格。 スッキリとした斑で,銀河と対にして紹介されることも多い。 品のある控えめな柄に加え,花姿も端正で,戦前から愛好家の間で作り続けられている。 花期は黄覆輪品種の中では最も早く,8月上旬から中旬。 柄は「金星」に比べると暗みにくい。
金星
(きんせい)
  黄覆輪の銘品。 斑はやや緑がかった黄色。 比較的派手な芸で,しばしば蹴込み状になる。 出芽の時期は発色が良いが,成長するにつれ褪色してしまう。 花期は8月中旬。「輝」に比べ葉元の斑の幅が広い。

(ひかり)
  黄覆輪の古い銘品。 明るい色の斑で,黄と言うよりクリーム色に近い。 そのクリーム色も出芽時から次第に褪色していき,開花期には白覆輪と同様の色合いになる。 基本的に地味な柄だが,しばしば縞斑気味に変化したりと面白い。 花期は遅く,8月下旬から9月上旬。 花型は首が長い独特なもので,覆輪斑サギソウの中では最も優雅と評される。

(あけぼの)
  後暗みの黄覆輪。 「金星」に近い柄と特徴を持つ。 似た品種としては「金閣」などが存在するが,「曙」の方がやや早く開花する(らしい)。
  なお,本品種の本来の特徴は上述のものだが,近年は黄曙斑や紺覆輪などでも「あけぼの」と呼ばれる個体が存在するようである。
金河
(きんが)
  この銘の黄覆輪をしばしば見かけるが,恐らく「金星」及び「銀河」を混同したものと思われる。 本当に「金河」という品種が存在するのかは不明。
  追記(2014.12.20):「金河」とされる個体を実際に見たのですが,斑も花も「金星」と同様のものでした。 比較栽培していなので確かなことは言えませんが,どうやら主に「金星」が本品種として出回っているようです。

散り斑
天の川
(あまのがわ)
  文政の頃から受け継がれてきた、散り斑縞の古い銘品。 斑は白〜緑白色。 花はやや大輪で,唇弁の切れ込みが深く,幅広な形も特徴的。 また,背丈が余り高くならない矮性品種でもある。 古くから作られており,銀河と共に『草木錦葉集』に収録されている。 斑の形状が変化しやすく,様々な斑型を生じる。 「根岸の月」は本種からの芽変わりによって生じた品種である。
残月
(ざんげつ)
  散り斑の銘品。 愛知県岡崎市の湿地帯にて発見された。 斑は白色。 他の散り斑品種に比べ,やや地味柄であることが多いが,鮮明な縞斑や覆輪などの斑型は本種が最も出やすい印象。 下記の「銀王星」は本種からの芽変わり品種。
天星
(てんせい)
  福島県白河市の野生選別個体。 幅の広い葉に細かい散り斑が入る。
宇宙宝
(うちゅうほう?)
  秋田のサギソウ専門店から。 詳しい来歴は不明。 葉は「天の川」に比べやや細く,縞斑気味の派手柄が美しい。
散り斑縞
  散り斑のサギソウは上記の銘品の他にも,長野県産・秋田県産・岡崎産・水戸産など,複数の系統が発見されている。 「天の川」と斑型はあまり変わらないが,花期はそれぞれの産地によって異なる。
  写真はそういった無銘の散り斑の一つで,特に斑が派手になるタイプのもの。 斑は緑白色。 普通の散り斑から縞,覆輪,根岸斑まで,斑型は多種多様である。

中斑

(あかつき)
  緑の覆輪を掛けた鮮やかな黄葉の品種。 以前は紺覆輪とされていたが,近年は黄中斑と表現される。 花期は8月下旬。 派手な斑の割に丈夫な品種で,広く普及している。
信濃川
(しなのがわ)
  美しい純白中斑の品種。 新潟県で発見された個体であり、軸や主脈まで白色に染まる。 斑が派手なためか,性質は非常に弱い。 2010年頃までは販売品を確認できたが,現在はほぼ絶種状態。
白鳳
(はくほう)
  「信濃川」と比べても遜色ない白中斑。 昭和後期に三重県北部の湿原にて発見された。 現在はおそらく絶種。 葉は比較的大きく,少々内巻き気味。花茎に斑は入らない。
根岸の月
(ねぎしのつき)
  「天の川」に生じる種々の斑型のうち,外部層が緑,内部層が散り斑縞に分かれ,全体が中斑状になるものを品種として独立させたもの。 オモトの根岸斑と同様の芸であることから,このように名付けられた。 斑が派手なため,性質は弱い。 命名された当時の個体は恐らく絶えているが,同様の個体は「天の川」からしばしば得られる。
  追記(2015.05.26):写真の個体も,5年ほど前「天の川」から選別したものです。 年々斑が中斑気味に変化していたのですが,次第にまともな球根が得られなくなり,今年遂に絶えてしまいました。
みもすそ
  三光中斑の美しい葉芸をもつ品種。 「白鳳」と同じく,三重県にて発見された。 柄は安定しており,ハッキリと三つの層(外側から、緑・黄・萌黄)に分かれている。 恐らく絶種。
三光中斑
  純白の三光中斑。 小町蘭のような繊細な斑と草姿が好ましい。 青森県産と聞いたが,詳細は不明。 芸はかなり荒れるようで,縞〜覆輪〜中透けと様々な斑型になる。

黄葉
明星
(みょうじょう)
  新潟県産の青葉から芽変わりで生じた萌黄葉。 葉が青葉と黄葉の中間色になり,その色調は秋まで変わらない。 サギソウ研究家,木村なほ先生の選別品。
  追記(2015.05.02):左の写真は「明星」として入手したもの。 個体は相違ないハズなのですが…ほとんど通常の青葉ですね。 更新を重ねるうちに、また元の青葉に戻ってしまったのかも知れません。
あけぼの
  黄曙斑というよりは萌黄葉で,萼片まで黄色に染まる。 「明星」よりは黄葉に近い色調。 来歴は不明だが,黄覆輪の「曙」からの芽変わりである可能性も。 入手時の銘はひらがなで「あけぼの」であった。
黄金葉
  来歴不明の黄葉。 芸は「黄収」と変わらないが,割合に丈夫で育てやすい。 非常に葉焼けし易いので,遮光は強めに。 黄葉は芽変わりなどで稀に生じるが,葉縁などに紺地を残すことが多く,完全な黄葉の個体は少ない。
  追記(2015.05.02):来歴を追ってみたら,こちらも「黄収」と同様,黄覆輪からの芽変わり由来の個体と判りました。 色合い的には,やはり「輝」が親なのでしょうか。 しかし,それにしては丈夫過ぎる気も…
黄収
(きしゅう)
  「輝」からの芽変わりで生じた個体。 完全な黄葉の品種であり,まるで「暁」から紺覆輪を取り払った様な葉芸を持つ。 萼片や距も淡黄色で美しいが,性質はやや弱い。

その他葉芸
瑞雲
(ずいうん)
  後暗みの蛇皮・白曙斑。 一時期そこそこ流通していたが,近年はあまり見かけない。 芸は特殊なものだが,安定している。
浄衣
(じょうえ)
  淡い色合いの白虎〜曙斑。 昭和42年,三重県伊勢市を流れる五十鈴川の湿地にて,故岩田謙一氏によって発見された。 銘は伊勢神宮の神官の浄衣が白いことに因む。 斑の発現率は低く,例年2〜3割程度。 茎・外花被・距にも斑は生じ,いずれも後暗みしない。 性質は強くないが,斑が出にくいことが幸いしてか,流通量は比較的多い。
金線兜
(きんせんかぶと)
  昭和50年頃,四日市市にて岡本氏により発見された黄曙斑の品種。 斑の入り方は「浄衣」に似る。 萼片にも黄覆輪状に斑が入り美しいが,残念ながら後暗み。 花期には青葉と大差ない容姿になる。 銘は蕾に入る黄覆輪状の黄条を兜に見立てたもの。
銀王星
(ぎんおうせい)
  白覆輪及び散り斑縞の多芸品。 「残月」の芽変わりから選別された。
松雪
(まつゆき)
  純白縞〜源平の葉芸品種。 柄は不安定。

青葉

(しゅう)
  サギソウ研究家である,故木村なほ先生の選別品。 個体変異の激しいサギソウの中で,最も秀麗な花を持つ個体として名付けられた品種。 花型・草姿共に非常に優れている。 性質はやや弱く,流通量は極少ない。

(なお)
  青葉から選別された立ち葉性の品種。丸みを帯びた花型も特徴的。 「武蔵野」より一週間ほど遅れて開花する。
弁慶
(べんけい)
  広葉矮性品種。 通常個体に比べ葉が二倍以上の大きさになるが,背丈はあまり伸びない。 また,球根も顕著に肥大化し,大きいものでは百円玉サイズにまで至る。 実生青葉からの選別品。
夏至
(げし)
  愛知県の生産者により登録された青葉の早咲き品種。 流石に夏至にとは言わないまでも,7月下旬には咲き始める。 同様の経緯で名付けられた品種として,他に「夏生」及び「立夏」が存在するが,花期がやや異なる以外際立った特徴は見られない。 なお,サギソウの花期は,一般的に産地が南になるほど遅く,北になるほど早くなる。
大隅
(おおすみ)
  分布南限である鹿児島県大隅半島のサギソウ。 花期が非常に遅く,10月上旬まで開花している。 がっしりした草姿だが,性質は弱い。 唇弁のフリルも少し特徴的。


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